これから書くことは、例えばビジネスプレゼンなど、説得力がモノをいう場面での話し方についてです。結婚式のスピーチや自己紹介など、気持を伝えたり共感を求めたりするスピーチにはあてはまりません。
ビジネス書のジャンルには、説得力をつけるためのノウハウ本がたくさん出ています。管理人があがり症克服に取り組んでいた頃、そういった本にも手を広げ、結構たくさん読みました。
けれど、それが役立ったかというと……どうなんでしょう……どれも内容が抽象的すぎて、ほとんど役立ちませんでした。スピーチの理論構造をああしろこうしろとか、主張をサポートする根拠を盛り込め、というような内容は一応分かるのですが、実際のところ雲を掴むようで、「じゃあどうすればいいか」というのがよく分からないのですね。
ただ、ある本の中で、あがり症に詳しいスピーチトレーナーが言っていたことがあります。それは、接続詞を使いこなせば話に説得力が出る、ということ。このアドバイスは具体的で、わかりやすく、大分役立ちました。なので紹介しておきたいと思います。
スピーチの論理力は接続詞から生まれる
説得力=論理力だと言われます。論理がはっきりしたスピーチには説得力がある。このことは誰も否定しないでしょう。
そして、論理的な話し方をするのに欠かせないのが、接続詞です。
「だから」「したがって」「しかし」といった接続詞は、文と文を論理的に繋ぐ言葉。この接続詞を入れないでスピーチすると、論理的に繋がらない文が並んでしまい、やがて論点がぼけてしまいます。そうなると、論理的な説得力は生まれず、説得力のあるスピーチにはなりません。
反対に、接続詞を使いこなしてスピーチすると、文と文が論理的にしっかり繋がります。そうなると最後まで論点がブレず、筋の通った、説得力のあるスピーチができるようになります。
7種類の接続詞
接続詞を使いこなすためには、最低限、接続詞の種類と用法を知っておかなければなりません。下に、それを簡単にまとめておきました。
接続詞の分類は、説がいろいろあるのですが、ここではコミュニケーション上の役割を重視した7つの分類に従います。
○順接
代表例「だから」
原因と結果を繋ぐ接続詞。原因となる事柄が必ず先に来る。
例文)彼は頑張って準備した。だから、プレゼンがうまくいった。
「だから」以外にも「それで・そこで・したがって・すると・よって・それで・そのため・それゆえに」などがある。
○逆接
代表例「しかし」
前に言ったことから予想できる結果とは反対の結果になることを示す接続詞。
例文)彼は頑張って準備した。しかし、プレゼンは失敗だった。
「しかし」以外にも「けれど・けれども・だが・でも・ところが・なのに・それなのに・にもかかわらず」などがある。
○添加
代表例「さらに」
前に言ったことに、何かをつけ加える時に使う接続詞。
例文)彼は大口の契約を取った。さらに、新規客も開拓した。
「さらに」以外にも「しかも・そのうえ・それに・それから・なお・そればかりでなく」などがある。
○並列
代表例「また」
2つの事を同列に並べる接続詞。
例文)彼は秀才であり、また、スポーツマンでもある。
「また」以外にも「ならびに・および・かつ」などがある。
○補足・説明
代表例「なぜなら」
前に言った事柄の理由を説明したり、より分かりやすく言い換えたりするときに使う接続詞。
例文)彼のプレゼンは成功した。なぜなら、頑張って準備したからだ。
理由を説明する場合は「なぜなら」を使う。前に言った事柄をより簡単に言い換える場合は、「つまり・すなわち・たとえば・要するに」などを使う。
○対比・選択
前に言った事柄と後に言う事柄を対比させたり、どちらか一方を選ばせたりする時に使う接続詞。
例文)決済方法はクレジットカード、または銀行振込です。
選択させる時は「または・あるいは・それとも・もしくは・ないしは」などを使い、対比するには「一方・逆に・反対に」などを使う。
○転換
代表例「さて」
話題を変えるための接続詞。
例文)さて、次は何を話しましょうか。
「さて」の他に「ところで・では・ときに・次に」などがある。
この中でも、特に使用頻度が高いのは「順接、逆接、添加」の3つだそうです。この3つを積極的に使う習慣をつければ、論点のブレない、説得力のある話し方が自然と身につく――と、あがり症の人たちを指導してきたスピーチトレーナーは言っています。
また、接続詞をうまく入れるには、スピーチの1文を句点「。」で短く区切ることも大事だそうです。(これについては「082話が上手い人は句点「。」が多い」のページで詳しく書きました)
あがりをコントロールできるようになってから
最後に、これは管理人の経験なんですが、あがりが極端にひどいときは、実は接続詞なんて、ほとんど意識できないんですよね。とにかく頭の中が「アワ、アワ、アワ」となって、接続詞どころか、そもそも何喋ってるのかが分からなくなる。
だから、あがりがひどいときは、下手に接続詞なんか考えない方がいいとも言えます。接続詞の練習は、ある程度あがりをコントロールできるようになってからでも遅くはない。自分のあがりが「重症だな」と思う人は、少しでも今の状態を改善する方向で考えた方がいいように思います。
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