自責感情の強い人があがり症になりやすいことは、「077思考パターンを変えればあがりが消える～自責感情を消そう」のページで書きました。何か良くないことが起こった時、その責任のすべて（あるいはほとんど）が自分にあると捉え、自分を責めてしまう感情。そんな自責感情があがり症の原因になるといわれます。
この「自責」とよく似た、「自己嫌悪」の感情も、あがりを助長する大きな原因とされています。「自責」は、「やればできたのに（やらなかった）」という、わずかでも前向きな気持ちがベースになっていますが、「自己嫌悪」は、できなかった自分を丸ごと否定する感情。その点で、自己嫌悪の方が始末にわるいかもしれません。
この自己嫌悪をなくせばあがり症は改善する、と、多くの心理カウンセラーが言っています。しかし、自己嫌悪をなくすのはそう簡単ではありません。人によっては根深い心理的原因があり、それを突き止めるのに何10時間ものカウンセリングが必要、ということもあるからです。
ただ、比較的簡単に自己嫌悪が無くせる場合もあります。どんな場合かというと、ある種の単純な思考パターンが自己嫌悪を生んでいる、という場合です。
「物事の原因＝人の感情」という考え方
では、その思考パターンとはどんなパターンか？
心理カウンセラーが指摘するのが、何か問題が起こったとき「原因は人の感情にある」と結論づける思考パターンです。例えば仕事で上司に叱られた時、「部長が私を叱ったのは、私のことが嫌いだから」と結論づける。あるいは、朝のミーティングで発言した時に、「みんなが笑ったのは、私を馬鹿にしたからだ」と結論づける、というような思考パターン。
こんなふうに「原因は人の感情にある」と考えると、問題の解決策が見つからなくなります。例えば、「部長が私を叱ったのは、私のことが嫌いだからだ」と考えると、その先に考えが進まないのです。嫌いなものは、それ以上どうしようもない。だから考えが進ます、解決策も見つかりません。
同じように、「みんなが笑ったのは、私を馬鹿にしたからだ」と考えると、考えが先に進みません。人を馬鹿にする感情は、誰の心にも自然に浮かんでくるもので、どうしようもないからです。
考えが止まり、解決策が見つからない時、心に何が残るかというと、「とにかく自分は嫌われている」「馬鹿にされている」という意識だけ。それが自己嫌悪を生み、人前での自信がなくなり、あがりやすくなってしまうのだ、と心理カウンセラーは言うのです。
思考パターンを変えて脱出する
こんな思考パターンのせいで自己嫌悪に陥っている場合、自分ひとりでできる解決策があります。あるコミュニケーションカウンセラーが勧めている方法をご紹介します。
それを要約して言えば、「物事を感情で解釈しないようにする」ということ。具体的に言うと、何か問題が起こった時に、できるだけ感情を表す言葉を抜きにして考える。そういう習慣を身につけることです。
例えば「部長が私を叱ったのは、私のことが嫌いだからだ」ではなく、「部長が私を叱った」というところ（事実認識）で考えを止めておく。それより先の「私が嫌いだからだ」というパターンには行かない。感情言葉は使わないで考えれば、それができます。
そして、できれば、「じゃあどうすればいい？」とか、「どうやってリカバーすればいい？」というように、具体的な行動を示す言葉を後に続けて考えると、問題解決に近づくことができます。
ノートに書いて良いパターンを定着させる
考え方のパターン（あるいは癖）を変えるのは、意識的にやらなければいけません。気を抜いて考えていると、癖になった感情言葉が頭にすぐに入り込んで来ます。それを防ぐために、コミュニケーションカウンセラーはノートを使うことを勧めています。
ノートをどう使うかというと、考えを書き出して行く。考えを言葉にして、書きながら考えていく。そうすれば、感情言葉が出た時にすぐにチェックできます。そして、感情言葉を徹底的に排除して考えを進めていく。
これを繰り返して、感情言葉抜きの思考パターンが定着すれば、あとはノートなしで、スムーズに考えを進められるようになるはずです。
この方法に取り組んでも自己嫌悪が消えていかないなら、他にも原因があるのかもしれません。あがり症の原因は、さまざまなものが組合わさっていると言われています。ただ、それでも、管理人をはじめ、多くの人があがり症を克服しています。あなたに合った方法は必ずあります。あきらめないことが肝心です。
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